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第三章 遠吠えは闇に木霊する
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 久しぶりに帰宅した実家では父がいつものように座椅子に腰掛け、テレビの前で根を生やしている。かつて学生であった私たち兄弟を差し置いて誰よりも勉強熱心であった彼も、今では本を手にすることはほとんどなく、日がな一日半径50センチほどのその小さな空間に吹き溜る。長年の勤めから解放された彼に許されたその時間を無碍に否定する気はないが、その姿に一抹の侘しさを感じるのもまた事実である。それは老いることで薄れいく好奇心や向学心への恐れからなのか、それともいつの日か老いた自分の姿を、にじみ出る寂しさや孤独感をそこに重ね見るからであろうか。
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