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第三章 遠吠えは闇に木霊する
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 「スラバヤ通りの妹へ」は1981年にリリースされた松任谷由実さんの「水の中のASIAへ」というミニ・アルバムに収録された曲の一つです。タイトルにある「スラバヤ通り」はインドネシアの首都ジャカルタにあり、歌詞の中で現れる「スラバヤ」はジャワ島東部、北海岸に位置する都市の名前です。スラバヤ通りは古めかしい鋳物やいかにも年代物といった感じのする陶磁器が尤もらしく鎮座する骨董品街として知られています。もう一方のスラバヤは人口300万人を超えるインドネシア第二の商業都市として栄える大都市です。この曲の舞台となったジャカルタやスラバヤは、インドネシアの中でも際立って移り変りの激しい都市なので、この歌詞の中で描かれる情景が今もどれほど残っているのかは定かではありません。しかしながら、例えばジョグジャカルタのように、同じようにオランダ植民地支配の基盤となったジャワの都市の中でも比較的時間の流れが緩やかなところでは、今日でもこの曲が伝える情緒が色濃く漂っています。籠に入った鳩や鶏を前に交渉をはじめる人々、ランブータンやシルサックなどの不思議な色形をした果物が雑多に置かれた小売店、軽やかに蹄の音を上げながら駆ける馬車やその後を流れるコロニアル様式の建物など、ここでは30年前に書かれたこの歌詞の内容そのままに日常が繰り広げられています。歌詞に現れる「痩せた年寄り」のように、日本の軍政時代につらい体験をした人々に出会うことも稀ではありません。何度もバキャロー(馬鹿野郎)と怒鳴られたと、少し顔を歪ませながら言葉少なに当時を振り返る老人や、「真白き富士の気高さを、心の強き盾として…」と、かつて覚えた日本の軍歌を堂々と、しかも流暢な日本語で誇らしげに歌う年配の方に会うたびに複雑な気持ちになります。サビの部分に登場する「ラサ・サヤン」はこの曲の鍵となる言葉で、ラサは「感情」や「気持ち」を、サヤンは「残念に思う」や「勿体無い」と言った意味合いのインドネシア語です。サヤンにはこの他に「愛しく思う」や「大切に思う」という意味もあって、松任谷由実さんがどれほどインドネシア語を理解していたかは知る由もありませんが、旅先で出会った少女を愛しく思う気持ちや、それでいて彼女とのつたないやり取りに感じるもどかしさ、うまく意思の疎通ができないことへの口惜しさ、それでも彼女との繋がりを大切にしたいという切なる想いが、ラサ・サヤンという言葉にはよく表れています。余計なことではありますが、ラサ・サヤンの後に続く「ゲ(Geh)」は完投助詞「エ( Eh)」 の誤りではないかと思います。恐らくSayang Eh(サヤン・エ)が一続きに発音された為に、単語の語尾と語頭がくっついてSayan Geh(サヤン・ゲ)のように聞こえてしまったのではないでしょうか。ちなみにラサ・サヤン・エは現在のマレーシアやインドネシア地域で広く受け継がれている民謡で、日本では藤山一郎さんが歌ったりもしていました。「スラバヤ通りの妹へ」はジャワの雰囲気をうまく掴んだ素敵な曲なので、興味のある方はぜひ一度聴いてみて下さい。

※ 歌詞のリンク http://www.uta-net.com/song/8815/
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 久々にテンプレートを作ってみました。これと言った特徴もありませんが、案外こんなものの方が使いやすかったりするのではないかと。
 ガルーダインドネシア航空がクアラルンプール、シンガポール両路線の就航を取り止めて以来、ジョグジャカルタのアディスチプト空港は国際線の発着便を一切持たない国際空港となってしまいました。けれども格安航空券を武器に目覚しい勢いで東南アジア全域に路線を拡大するエアアジアが1月末からクアラルンプール便の運航をはじめ、また少し遅れて同路線にマレーシア航空も参入したことで、アディスチプト空港は久しぶりに名実共に国際空港の立場を回復することができました。シティターミナルとして発展を続けるこの空港がインドネシア内外からジョグジャを訪れる人々の窓口として広く認知され、これから先も多くの人々に利用されることを期待したいです。
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