第三章 遠吠えは闇に木霊する
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数日前に警戒レベルが最高に達したムラピ山は断続的に熱雲、火砕流を発生しながら今なお盛んに火山活動を続けている。噴火に伴う火山灰は、この時期、東から西へと吹く貿易風に乗って、世界遺産として知られるボロブドゥール仏教寺院を白く覆いながら遠く西ジャワまで流れ着いている。昨夜の噴火では、これまで被害の少なかったムラピ山の南裾にも火山灰が降り積もり、火口から27kmほど離れた古都ジョグジャカルタも一夜にして灰に包まれた。道路に積もった灰を巻き上げ、白い煙を残して走る車と、その脇をマスク姿で歩く人々。風が吹くたびに屋根や木々に積もった灰は中空に舞い上がり、静かに辺りを煙らせる。ムラピ山の警戒態勢が解かれぬ内は、このような光景がしばらく続くことになるのかもしれない。
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