第三章 遠吠えは闇に木霊する
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
断食はイスラム教徒によって実践されるべき五行のうちの一つで、ラマダン(イスラム暦第9月)の30日間、イスラム教徒は日の出から日没まで一切の飲食を断つ。聖なる月とみなされるこの一ヶ月、人々は断食を行いながらも普段どおりの活動を怠ることなく続け、その中で行動を慎み、心穏やかに過ごして心身を清めるものとされる。これが社会の中で実現されれば素晴らしい話に違いないが、残念ながら現実にはそう上手くはいかない。この間の急激な生活リズムの変化からくる睡眠不足と空腹感、それに伴うストレスや倦怠感はいつにも増して自分本位に行動する人々を社会に氾濫させ、日常生活にいらぬ諍いを生み出し、また社会活動全般を停滞させる原因となっている。それでも大きな問題とならないのは断食に特別な地位が賦与され、それさえしていれば許される/あとは二の次と言った甘い考え方がイスラム教徒が大半を占める社会の中でまかり通っているからに他ならない。ここではイスラムを実践するための手段としての断食が形骸化し、それ自体が目的化してしまっている。方々で頻りに叫ばれる断食の貫徹もこれでは意味を持たず、空しく響くだけである。日没を知らせるサイレンだけを心待ちに日中をやり過ごす人々や、ただ断食を無事に終えることだけに終始している人々は今一度断食の意味を思い出し、残り少ないラマダンを有意義に過ごさねばならないだろう。
PR
この記事にコメントする