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第三章 遠吠えは闇に木霊する
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ブルーカラー

 舞い上がる砂埃を吸ってすっかり灰褐色になった肌は、どんなに強い日差しを受けても決して輝かない。井戸から水をくみ上げ、砂を振るい、セメントをかき混ぜる。コンクリートブロックが積み上げられる度に少しずつ形をなしていく建物の姿に感慨はない。細身の体に無駄なく付いた筋肉、傍から見れば羨ましいほど均整の取れた体もこの労働ゆえだ。ほかに日銭を稼ぐ手段もなく、自らの思い通りになる唯一の資本だけを頼りにひたすら働く。炎天下で黙々と進められる作業の中、つるべを満たす水の重さに浮き上がる力瘤だけが静かにものを語る。


ホワイトカラー

 パリッとした長袖のシャツに覆われた肌は、通勤時の日焼けや冷たすぎる空調の風から守られながらその白さを維持する。新聞を読み耽り、同僚としゃべり、携帯電話をしきりにいじる。目の前に積み上げられた書類の束を横目で捉えながらも、手を着けようとは決してしない。小奇麗な着こなしに知的なアイテム、一目で事務労働と分かる井出達は自分たちが中産階級以上に属すことをさり気なく誇示する心憎い演出だ。難しい顔をして睨むパソコンのモニターにトランプゲームの画面が映し出される中、カチカチと優雅に奏でられるマウスの音もオフィスに響く談笑にかき消される。


ブラウンカラー

 にじみ出る汗でテラテラと光る褐色の肌は、他を圧倒するかのように隆起した筋肉をいっそう際立たせながら不気味な輝きを放つ。バーベルを胸元まで引き寄せ、エキスパンダーで体を伸ばし、スクワットを繰り返す。筋肉の厚みが増す度に高められる肉体美に思わず自らうっとりする。頭部に比べて肥大化しすぎた腕や胸周り、傍から見てもすぐにバランスを失っていると知れるその体こそが日頃のトレーニングの賜物だ。恵まれた家庭のお陰で労働意欲など持たず、自尊心を満たすためだけにマッチョクラブに通ってお金を費やす。エアコンの効いた快適な室内での修練の中、トレーニング器具の発する冷たい金属音だけが忙しなく鳴り響く。
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