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第三章 遠吠えは闇に木霊する
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優しく育てられた日々も束の間
すべては屠られるため 人の罪を背負うため
山羊に生まれた自分を連れて 歩く背中は何も語らず

それが生きるということか

緩めた手綱を振り切って 背中に瘤ある牛が逃げる
人の言いなりになる日もこれで 最後となることを願わんばかりに

それが生きるということか

生まれた子猫をそろってみんな 人の気ままが奪い去る
乳をやることもじゃれつく姿を疎ましく思うことも
今となってはもうできぬ

それが生きるということか

自立のできぬ唐辛子の茎が 支えを失って倒れていく
花をつけることもままならぬまま
大地に小さな弧を描きながら

それが生きるということか

痩せた実の落花生が束になって運ばれていく
どこへ行くとも分からなぬままに
大地の匂いを漂わせながら

これが生きるということか
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 ここからはほぼ真北に位置するジャワの名峰ムラピ山が朝に霞んで淡いシルエットを遠くに残す。この半年というもの変わらずに西から東へと棚引いていたその噴煙は、季節の移ろいと共に東から西へと向きを変える。
 年に二回、決まった時期に風向きを異にする季節風にのってインドネシアの地を訪れてから早幾年。帰る風をつかまえそこねて長逗留が続いている。それはまるで東西交易史の中に現れるいつかの船乗りたちのようなもの。火口からわずかに立ち昇る煙は風を受けて静かに散らばりながら西へと広がっていく。そしてその風はジャワ島を越えてユーラシア大陸の東側をすべるようにやがては日本へとたどり着く。
 夜、机に向かっていると遠くからダランの朗誦が耳に届く。外に出て耳を傾けてみても声はもうどこからもやっては来ない。部屋に戻ってしばらくすると、今度は青銅を打ち鳴らすガムラン独特の調べが流れてくる。再び外に出てさっきよりもずっと慎重に耳を澄ませてみるけれど、聞こえてくるのは暗がりにまぎれた蛙の鳴き声と人気のない小道をいくバイクの音ばかり。耳の奥にかすかに残ったワヤンの名残は夜の静寂が訪れると幾度となく活気付いて賑わいを取り戻す。
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