第三章 遠吠えは闇に木霊する
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深夜0時過ぎ、中国暦(イムレック)の新年を迎えて花火や爆竹の音が市街地からムラピ山の裾野まで響き渡る。この日、香煙立ち籠める寺院の中で熱心に祈りを捧げる参拝客の姿や、境内で催される獅子舞や龍灯舞を食い入るように見詰める親子の様子など、インドネシア各地の模様がメディアを通して報じられた。スラバヤやポンティアナックのように中華系インドネシア人が多く居住する都市はもちろんのこと、ここジョグジャでも市内に二つある寺院周辺をはじめとして、大きなショッピングモールでも数週間前からイムレック・フェアが開催され、赤を基調としたチャイナ服や注連飾、縁起物の菓子などをあつかう特設売り場が設置されて賑わいを見せている。新年にはアンパオと呼ばれる紅色の小さな封筒にお金を入れて大人から子供へ、あるいは裕福な者から恵まれない者へ手渡す習慣があり、中華系が営む大商店の前にはこの機会を逃すまいと集まった人々の群れが押し合い圧し合いしながら、そのお年玉を巡って厳しい奪い合いを繰り広げる。それはもう爆竹の音さながらの凄まじさである。
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